橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より物語後半の表紙絵を描かせていただきました。
前回はアナログでしたが、今回はデジタルにして雰囲気を変えています^^

こちらの物語は、中世ヨーロッパを思わせる世界――アルボレダ王国の高級娼館「月下香亭」を舞台に繰り広げられる群像劇です。
世界観に奥行きがあり、まるでそこに存在しているかのように感じられる登場人物たちがたしかに人生を生きています。
前半の表紙絵を描かせていただいたときに小説を拝読してからというもの、描き手としては「描きたい!」と感じ、一読者としてはそのおもしろさにドキドキしています。
以下、制作過程をご紹介いたします。
カラーラフ
一度目のカラーラフ
カラーラフはこちらです。

「主人公サラ(ロニセラ)とカメリア、シメオン、クロードの三人の幼馴染たちを描いてほしい」とのご指定を受け、それぞれの想いと関係性を意識して描かせていただきました。
webでの公開を前提とし、横構図にしています。
悲劇や困難があっても、シメオンへの思いを抱いたままで元気に生きようとするサラを主人公らしく前面に配置しました。
彼女の持つスイカズラの花は、秘めた想いとしてシメオン(後列右)に巻きつかせました。
されるがままになりながらもどこか上の空に見えるカメリア(後列真ん中)の本心はどこに……?
不安なシメオンはカメリアを抱き寄せています。
それを目の当たりにするクロード(後列左)は、剣を出すことでしか自分の気持ちをあらわすことができないのかもしれません。
そんなかたちでもクロードとかかわることができて、カメリアは笑んでいるようです。
……というイメージでお描きしました。
背景は、左側にスイカズラが、右側に椿の花が咲く庭園です。あたりには椿の花びらが散っています。

こちらのカラーラフで打ち合わせの結果、
- クロード(後列左)の髪:グレーに変更する。
- スイカズラの蔦:量と力を控えめにする。
以上の修正点を承りました。
二度目のカラーラフ

ロゴ入れをおこなう
タイトル『チューベローズの温室』とともに『Maison de Tubereuse(月下香の家)(トゥベルースの最初のeにはアクサンがつく)』のロゴをお入れすることになりました。
ひとまず、五種類ほどロゴ案をつくりました。
案1

案2

案3

案4

案5

組み合わせはすべて一例
この段階では、これらの組みあわせは一例として考えていました。
日本語タイトルの書体を「1枚目」・仏語タイトルの書体を「2枚目」、文字の色や光り方のデザインのみ「4枚目の日本語タイトルのもので」など、異なる組み合わせのご指定をお受けしても柔軟に変えることができます。
日本語、仏語タイトルの位置を変更することもできますので、たとえば「1枚目」で仏語タイトルを日本語タイトルの下に変更する……というご指定も可能です。
作品世界の魅力をお伝えするさまざまな可能性を探していました。
三度目のカラーラフ(決定稿)
連載中の本編を拝読していますと、サラ(ロニセラ)の衣装がクリーム色+赤のサッシュベルトというシーンがありました。
ラフ画ではこの時点より前のエピソードの衣装カラーになったままだったので、「クリーム色の衣装と赤のサッシュベルトはいかがでしょうか」とご提案いたしました。
打ち合わせの結果、サラの衣装は連載中の本編に合わせることになりました。
前回からの変更点
- サラのコタルディ:『ロニセラの日常 二』に合わせて、コタルディをクリーム色に、サッシュベルトを赤に変更しました。

カラーラフ決定稿
ロゴも決定しました。

こちらを清書していきます。
途中経過
途中でご報告した経過がこの絵です。

背景がまだまだうすぼんやりとしています。
スイカズラのツタや、ツバキの花びらもありません。
完成作品
タイトルあり

タイトルなし
