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橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

完成図【2015年6月11日(木)完成】

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より前半の表紙絵を描かせていただきました。
 紙はバンブー水彩紙(細目)265g(サイズおよそF4 320×240)です。
 メイン画材は顔彩。補助として、水干絵具、墨、アクリル、色鉛筆を使用しました。
 主人公サラ(画面左の赤毛の少女)とカメリア(黒髪に椿を飾った手前の女性)、シメオン(手前右側の蜂蜜色の髪の男性)をメインとして引きたてるため、テーブルについている面々は淡彩で仕上げています。
 こちらの絵は、橘さんの作品『チューベローズの温室』をあらかじめ拝読し、読みこませていただいたうえで、各キャラクターのデザインからさせていただいたものです。
 娼館という狭い(はずの)世界が舞台でありながら、その奥に国と世界の広がりをたしかに感じる骨太な作品です。
「キャラクター」という枠を超えて、「人間」として生々しく活躍する人物たちはみな魅力的です。
 彼らが織りなす群像劇の面白さ、すばらしさが少しでも伝わる絵が描きたいと力を尽くしました。

制作過程

構図案

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 小説を拝読してすぐにこちらの構図が浮かんできました。
 群像劇の印象が強いので、前半のメインキャラクターを配置しています。
 主人公サラ、王子さま(!)シメオンと、主人公が思慕の奥で複雑な思いを抱いているであろうカメリアをメインに据えました。
 娼館「月下香亭」で暮らす娼婦「フルール」たちはみな、花の名前を源氏名としています。
 彼女たちのその名前になっている花々も、画面におさめたいと考えました。

    作中の玄関ホールの特徴
  • サラの暮らしていた家が三つは入るほどの広さ。
  • アーチ形の高い天井。三階まで吹き抜けになっている。
  • 白の漆喰壁に色とりどりの花の絵が本物そっくりに描かれている。
  • 床もタイル片を敷きつめた花模様。
  • アーチを支える太い石柱には、蔦と花が絡みついた模様の浮彫がある。
  • 薄く漂う月下香の香り。
  •  実際に絵になっている背景は玄関ホールの特徴とは違っているので、違う場所になっています。
    〈多すぎる色の洪水に、サラは眩暈がしてきて瞼を閉じた。〉
     本文のこちらの一文が印象的でしたので、「色の洪水」をキーワードにしつつも、作品世界のイメージカラーとして感じた「花のような紫を帯びたピンク」で調和をとった絵にしたいと制作に取りかかりました。

キャラクターデザイン案〈サラ〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 キャラクターの特徴は、小説内から抜きだし作業をおこないました。

  • あでやかな赤毛を三つ編みにしている。
  • 丸い輪郭、小ぶりで形のよい鼻、口角の上がった薄い唇。
  • 深い褐色のパッチリした両目。
  • どことなく猫を思わせる愛らしい顔だち。
  • 前半では十一~十六歳。
  • チュニックにポケットつきのエプロン。
  • 十四歳時の体型⇒胸も尻も薄く、少年のようにほっそり。あでやかさには程遠い。

キャラクターデザイン案〈クロード〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 砂色の髪。暗緑色の瞳が陰気に光っている。
  • 二十歳そこそこ。
  • 尖った鼻、薄い唇、切れ長の目。鋭い刃物のような雰囲気を持つ若者。
  • 真夏でも着ている黒いマントには、花弁の大きな白い花模様がある。
  • 黒づくめの姿……黒い皮手袋、腰に据えた長剣、襟付きの黒い上着。
  • わずかに右足を引きずる癖のある歩き方。
  • よく鍛えられた肉体は彫刻のように均整がとれている。

キャラクターデザイン案〈マダム・ローズ〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 小柄、むっちりとふくよか。
  • 真っ赤な細身のコタルディを着ている。ひらひらした長袖。胴を絞った飾り帯から金色の剪定鋏を吊り下げている。
  • 大きくせり出した胸元に、金細工の重たげな首飾りが輝く。
  • 丸い手首には金の腕輪。
  • ヒールつきの硬い革靴。
  • 四十歳過ぎ。
  • 赤みがかった金髪を黒い髪留めでまとめている。
  • 醜女。頬のたるんだ丸顔、思いきり離れ離れになった黒い目、ひしゃげたような鼻、揺れる二重あご。厚化粧が造形の悪さを強調している。

キャラクターデザイン案〈アイリス〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 柔らかく、細く、結い上げにくい栗色の巻き毛。愛らしい薔薇色の頬。薄化粧。薄茶色の瞳。
  • サラより背が高く、ふっくらと女の子らしい肉づき。
  • 可愛らしい顔だちだが、個性が薄く、未完成な印象。
  • 青紫色の花かんざし。
  • 胸元が開いたコットにストールを羽織ったしどけない姿。

キャラクターデザイン案〈ウィステリア〉(その1)

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 背が高く、ほっそり。立っているだけで満開の藤花を思わせる。
  • 三十代後半。「若いころはどんなに美しかったか」と想像が膨らむような美女。年相応の落ち着きがある。
  • 垂れ気味のまなじり、口元のほくろがなまめかしい。
  • ゆるく巻いてまとめたこげ茶色の髪。
  • 化粧はきっちりしているが、けばけばしい印象はない。

 この段階で、ウィステリアの着用ドレスのカラーはあまり詰めていませんでした。
 そのため「黒かそれに近い色のドレスを常用している」とのご指示をいただきました。

キャラクターデザイン案〈ウィステリア〉(その2)

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 ドレスの色情報追加のため、デザイン画も若干、修正を加えました。

キャラクターデザイン案〈ジュスト〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • どう見ても十代半ば。幼さの残る顔。
  • 金髪、潤んだ茶色の瞳。
  • 筋肉は薄い。

キャラクターデザイン案〈ベレック〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 黒髪、黒目。三十代半ばくらい。
  • 高い鼻筋。奥まった両目は思慮深い。
  • ややえらの張った頬と口元はひげに覆われている。
  • やせ気味の色白の身体。あきらかに軍人のものではない。

 シメオンとびみょーな立場でびみょーな関係があるといえるベレックは、彼と(ビジュアル的な意味で)対になるのではなかろうかとイメージしました。
 作中で、シメオンは流行の服装であることが書かれていますので、それに対するかたちでベレックは保守的な服装としてデザインしました。
 毛皮つきのガウンは、中世の紳士が着ていたガウンをもとにしています。
 舞台であるアルボレダ王国の気候(本編第四話では冬の季節)とも「とくにずれはない」とのお言葉をいただき、こちらの衣装で決定としました。

キャラクターデザイン案〈シメオン〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 二十歳くらい(初登場時)~
  • 濃い蜂蜜色の髪。濃紺の瞳はアーモンド型はいかにも育ちのよい軽やかさがある。
  • とても整った顔立ち。まっすぐな眉と鼻筋が意志の強さを表している。
  • 頬も首筋も健康的に日焼けをしているが、労働者には見えない。
  • 流行の短い青のシュルコ、細身のブレーに型押しのベルト。はやりの服が嫌味なくなじんでいる。
     薄手のマントを肩にひっかけているときも。
  • 「かっこよくてお洒落でお金持ちで、思っていたよりちょっと庶民的な感じだったが、素敵な王子様である」――サラの印象より。

キャラクターデザイン案〈カメリア〉

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙
  • 長い黒髪、春の空のような淡い青の瞳にはつねに凛とした強さがひそんでいる。長い睫毛。薄い紅色の唇。
  • 線の細いはかなげな美貌の持ち主。どんな客に対しても従順。
     寒さに耐えて咲き誇る椿の花のような印象の女。
  • サラより十歳年上――二十一歳(初登場時)~
  • 少し後れ毛を残した結い髪が肌の白さを引きたてている。
  • 本編での着用コタルディの色:薄紫色、朱色。
  • 本編での着用コットの色:無地の青。
     このとき、髪は左耳の横でひとつに束ねている。
  • 所有アクセサリー:椿の花が浮かびあがっている赤瑪瑙のカメオ。ふちは小さなダイヤモンドが飾る。
     翡翠の耳飾り。銀細工のかんざし。金の指輪。

表紙 ラフ画

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 各キャラクターの配置は最初の構図案と変わっていません。
 ウィステリアのみ、立っている→座っているに変更になっています。
「サラは幼いほうがイメージに合っています」とのご指示をいただき、幼さを心がけて描きました。
 彼女がお盆で運んでいるのは、作中でのちにキーワードとなるらしいお花です。
 画面左と左寄り中心の円柱にチューベローズを描きました。
 テーブル上の左の皿にはバラを、右の酒瓶には藤の花を活けています。
 真ん中はフルーツのカゴ盛りです。花はいずれ果実になりますので、果物を描くことにしました。
 カメリアは髪に椿の花を飾っています。
 顔が向こうを向いているアイリスはアヤメのかんざしを挿しています。
 月下香亭と、女性キャラクターの源氏名になっているお花をおさめた絵としました。

表紙 エスキース

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 タイトルに含まれる「温室」という言葉、そしてその温室である舞台・娼館から、ピンク色や紫色の空間、そこに散る白い花びらの色をイメージしました。

表紙 エスキース(タイトルあり)

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 タイトルが入るとこのような雰囲気になります。
 この段階で、サラの持っている花の色について、修正のご指示をいただきました。
 白~黄色がメインのお花なのに、わたしの調査不足でマイナーな赤色にしてしまっていました。
 もちろん本画ではきちんと白色で塗らせていただくことになります。

完成(文字なし)

橘 塔子様 作『チューベローズの温室』より表紙

 サラの花の色を、赤から白に修正しています。

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