映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』は、1968年に公開された三船敏郎主演の映画です。
山本五十六を主役にした、ほぼ同名タイトルの映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六(2011年公開、役所広司主演)』とは違う映画です。
この二本の映画の見分け方は、タイトルのいちばん初めの文字に注意することです。
『連合艦隊司令長官』の『連』の漢字が違います!
三船敏郎版(1968年公開)は『連合艦隊司令長官 山本五十六』、役所広司版(2011年公開)は『聯合艦隊司令長官 山本五十六』となっていることがポイントです。
モデルアート社の艦船模型専門誌『艦船模型スペシャル』などで大活躍中の艦船模型プロモデラー 渡辺真郎 氏に、映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』の見どころを聞きました!

映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』は三船敏郎の名演がすばらしいです。
カッコよさに全振りの山本五十六のほか、多数の昭和のイケメン俳優を堪能できる映画ですね。
この映画のみで再現されていると思われる、戦艦『金剛』『榛名』による艦砲射撃シーンもありますので、特撮好きにもおすすめです。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』での山本五十六とは?
艦船模型専門家として、山本五十六の描き方についてどのように思われましたか?

この映画の主役は、三船敏郎演じる山本五十六です。
主人公の山本五十六を多角的な視点で表現しているのがポイントです。
具体的には以下の視点です。
- 若い飛行兵とのかかわり
- 従兵から見た山本五十六
- 陸軍側からみた山本五十六の印象
最後にあげた【陸軍側からみた山本五十六の印象】はたいへん珍しい題材です。
連合艦隊司令長官である山本五十六をテーマにした作品は、海軍視点かつ海軍の中でどのように活躍したのか? という立ち位置で終始することが多いので。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年)』では、海軍だけでなく陸軍からどのように思われていたのかも描かれています。
より広い視野で山本五十六を見られるのは貴重ですね。
艦船模型専門家として、山本五十六の性格表現などはどのように思われましたか?

映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年公開)』では、山本五十六は徹底した人格者として描かれています。
椅子に画びょうを置いて部下を驚かせるような人には見えないですね(笑)。
多くの人望を集める山本五十六
この映画における山本五十六は、非常に多くの人から慕われています。
兵士はもちろん、市井の人々にいたるまでたくさんの人望を集めます。
だからこそその最後を迎えるときにとても悲しいのですが……。
逆立ちシーンもある!
山本五十六は「逆立ちが得意だった」ってご存知ですか。
重厚な空気をまとって威厳ある表情で写る写真などを観ていると、「そんな特技があるの!?」と意外に思ってしまいます。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』では三船敏郎による逆立ちシーンの見せ場があります。
ぜひご自分の目で確かめてみてください。
台詞回しが非常に研究されている
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』では、山本五十六のせりふひとつひとつがよく研究されています。
山本五十六は史実から見てもわかるとおり、数奇な運命のなかを生きた摩訶不思議な人です。
戦争反対だったのに自分が連合艦隊司令長官として指揮を執らねばならなかったことなど、その最たるものですよね。

しかも本人はけっきょく負けることがわかっていたんですから!
いろんな面があるからこそ、みんなそれぞれ思う「おれの五十六像」があると思うんですよ。
だから、せりふをつくることは本来とてもむずかしいわけです。
「いや、おれの思う五十六はこんなこといわねえ」みたいな感想が出てきかねない。
この映画ではそういったことがないようによく研究されていて、せりふに説得力があります。
「ああ、イソさんならいいそうだなあ」、史実を知る方もそう感じると思いますよ。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』の時代背景※ネタバレあり

この映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』では、開戦前から物語がスタートします。
具体的には、海軍次官として三国軍事同盟を阻止するために活動していた時代です。
『条約反対派三羽ガラス』のときですね。
そのあと山本五十六の尽力かなわず三国同盟締結となり、日米は開戦します(太平洋戦争)。
主要な戦いと、そのなかで苦悩する五十六の葛藤がストーリーで描かれます。
そして五十六は史実どおりに人生の最期を迎えます。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』のストーリー的な見どころ

この映画特有の、ほかには見られないストーリー的な見どころは、ミッドウェー海戦後の南方での作戦指揮について描かれていることです。
山本五十六を扱う映画は数多くあります。
史実は変わらないので、それらのなかでストーリーが似通ってしまうのは仕方のないことです。
興味深いのはシナリオの盛り上がり方、漫画でいうページ配分というか時間配分まで似てしまいがちなことです。
具体的には、ミッドウェー海戦後をしっかり描く映画はあまり見られないのです。
ミッドウェー海戦に向けてストーリーが盛り上がっていき、この敗北で頂点を迎え、あとはエンディングに向けて一気に収束していく……そんなパターンになっている山本五十六映画が多いのです。
ところがこの映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』では、ミッドウェー海戦後の展開も丁寧に描かれていきます。
ほかの山本五十六の主役映画ではフワッと流されがちな南方での作戦指揮についてもしっかりストーリーがあるんです。
必然的に、陸軍側からみた山本五十六の印象も取り扱われることになります。
この映画の大きな特徴のひとつであり、山本五十六をメインに扱った映画では珍しい構成です。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』の特撮は見どころいっぱい!

戦艦『金剛』『榛名』によるヘンダーソン飛行場への艦砲射撃を特撮で再現してあるのは、おそらくこの映画だけです!
両戦艦のファンはぜひチェックしましょう。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』は1968年公開の作品なので、当たり前ですがCGはありません。
戦いのシーンなどはすべて特撮で再現されています。
特撮映画ではよくあることなのですが、すべての特撮シーンを新しく制作しているわけではなくて、過去作品のストックフィルムで補っているシーンも多々あります。
そこに新しく撮った映像を絶妙にミックスして制作されています。
ミニチュア特撮で新しく撮影されているシーンの見どころは以下のとおりです。
- 鹿児島湾内での急降下爆撃訓練
- 連合艦隊旗艦に就役した戦艦『長門』
- ミッドウェー海戦に出撃する戦艦『大和』
- 戦艦『金剛』『榛名』によるヘンダーソン飛行場への艦砲射撃(※この映画のみの特撮シーンだと思われる)
山本五十六が戦死する場面もこの映画での新録です。
この映像はのちに映画『連合艦隊』にも使用されています。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』の出演者の見どころ

当時駆け出しの若手俳優だった池田秀一が出演しています!
いまでこそ『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルで有名な彼ですが……
駆け出しの若手俳優だった池田秀一に注目してしまいますね(笑)。
彼は零戦でP-38に被弾させる腕前を披露してくれます。

『P-38』は「ライトニング」の愛称で呼ばれた、米軍の航空機です。
ロッキード社が開発し、アメリカ陸軍などで運用されました。
三胴設計の双発単座戦闘機で、めちゃくちゃ凝った造形ですが一人乗り戦闘機です。
日本軍では「メザシ」「ペロハチ」のあだ名で呼んでいました。
正直めちゃくちゃ強いヤツです!!
池田秀一のほかでは、山本五十六とかかわりが深い飛行兵を黒沢年男が熱演します。
2022年現在『オウミ住宅』のCMで「いっしょに踊り~ましょ~」って踊っているおじさんですね。
加山雄三、平田昭彦など昭和イケメンの銀幕のスターたちが出演しています。
イケメン好きの方もぜひチェックしてみてください。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』はどんな人が観るべき?

男が思うカッコイイ男を描いた映画、それが『連合艦隊司令長官 山本五十六』です。
史実を知る人にもぜひ観てほしいです。
ぼくは泣きました。
「嗚呼、これぞ日本の男のカッコよさだ!」
この映画はそれを思いださせてくれます。
「カテゴリが違う」といえばそれまでですが、いまどきのライトな物語におけるヒーロー造形にモヤモヤのある人にはとくに楽しめると思いますよ。
男性から見て「格好良い」と思える理想の生き方が描かれています。
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』の放映データ
公開年月日 | 1968年(昭和43年)8月14日 |
カラー? モノクロ? | カラー映画 |
山本五十六を演じた俳優 | 三船敏郎 |
主人公(メインキャラクター)は? | 山本五十六 |
上映時間 | 130分 |
受賞歴、実績など | 文部省選定映画。 カラー作品で初めて、山本五十六の乗った飛行機の墜落シーンを描いた。 |
製作会社 | 東宝 |
監督 | 丸山 誠治 |
脚本 | |
特技監督(特撮) | 円谷 英二 |
映画『連合艦隊司令長官 山本五十六(1968年、三船敏郎)』に類似した内容の映画は?

役所広司が山本五十六を演じた『聯合艦隊司令長官 山本五十六(2011年公開)』がほぼ類似の内容です。
主役の山本五十六の描かれ方が違うことや、ミッドウェー海戦後の展開(南方での作戦指揮)の描き方など、まったく同じであるとはいえません。
とはいえ、史実は史実として描かれているので、山本五十六の生涯と太平洋戦争の流れを知るためには問題ないでしょう。
古い映画を観慣れていない人には、役所広司版の『聯合艦隊司令長官 山本五十六(2011年公開)』のほうがモダンで観やすく感じるかもしれません。